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隣でむくりと起き上がった男がトイレに行こうと布団を出るときの右足に毛布が引っかかって思わず近くの柱に手をつく。これまたよく晴れた日で、久しぶりに机の近くの窓・ベットの近くの窓・台所の窓・全ての窓を開け放つと入ってくる、室外から室内の蝿、羽音は耳のまわりに近づくときに聞こえるけど聞こえない時にも羽音は蝿の周辺には鳴っている、ぶら下がった洗濯物にぶつかっても揺らすことができるほどの重量を持っていない蝿は、蝿は、机近くの窓から出てゆく。

 

汗ばむのは長袖のシャツで歩いたからで、日傘を差している3人は大学で知り合って仲良くなって横一列に並んで歩きながらそれぞれの今の職場、雨の日には雨傘を持つ姿、飲み物を買うために大学病院前のファミマで買ったアイスコーヒーを、飲み物買わなくていいの?と尋ねられた人が差し出されたプラスチックカップに刺さった黒いストローの先を人差し指と親指で素早く拭うのは口紅をとるための仕草、一口もらって飲む。

ツツジが咲いていました。と書いてみたので書いてあるのを読み終えた、今、目の前に本当にツツジがあるわけではない、というのは2人とも同じ状況で、付け足せば真っ赤なツツジのこと、白いのもピンクのも知ってるし見たことあるけど、ここでのツツジは真っ赤なやつのことなのは、独占していた情報で、土手の斜面はコンクリートの部分が滑りやすいので気をつけて、ケツのあたりで揺れるサコッシュ、後ろから声を掛ける。

 

台車に乗せたプロジェクターとスピーカーを会議室まで運んだことない、配布資料の表紙に描かれたイラストに吹き出したことない、ペットボトルのお茶(か、水)に紙コップ被せて準備しておくの笠地蔵みたいだと思ったことない、白い模造紙買うためにドンキホーテまで走ったことない、丸まった模造紙広げようとして四隅にレンガ置いたことない、散歩中のコーギーとすれ違って見上げられたことない、沖縄行ったことない、ので思い出したことない。

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