巻き込んだ下唇を上の前歯で噛んでいた、離すと開いた口の隙間から息を吸う、天井の油で黄ばんだビニールクロスのわずかな凹凸に向かって「結局、日曜日はどうしましょうか」と言ってから顔を見るために首の角度を変えようとするんだけど、ゆっくりすぎたのか角度を変え終わった首の上についた頭についた目で見た、顔の、前髪に少し隠れた目が見ているのは、こちらから見ると左側の手の、右手の握ろうとする残りわずかなビールが入った背の低いコップは、中華料理屋の店主が持って来てテーブルの上に置いた、瓶ビールと餃子で通常950円のところが晩酌セットで800円なら頼もうか、そうなると餃子があるからパリパリワンタンじゃなくてザーサイにしようか迷ってるうちに瓶ビールとコップが先に出てくる、手酌する時に掴んだコップはよく冷えていて、もう冷えてないコップに入ったビールが少ないが、瓶の中身は、2本ともラベルがこっちを向いているので見えづらいけど頬杖ついたら目の位置変わったので見えた、両方とも空だ、というのはラベルがあっち向いてるからよく見えるけど「もう一本頼みませんか?」って言いそうにない、頬杖なんかついっちゃってさっきからつまらなそう。
試しに考えてみる、描こうとするとき目を伏せることになる、法廷画家は、耳では聞いている審議を手に持った鉛筆が紙に触れる机の向こうの検察官のネクタイピンを見て、ネクタイピンは省略する、続いている審議の中にいながら発言内容は薄れている声色や緩急だけが流れていて紙の上に走らせている鉛筆の音が、 沈黙に顔を上げると被告人が証言台に立っているので、スケッチブックのページをめくって出てきたまだ白い紙に証言台とあまり動かない裁判官と裁判長のラフな位置関係だけを走り描きして、被告人の斜め後ろから見える鼻の稜線をまずは一度目でなぞる。やけに声の良い被告が、口を開くと顔を上げる速記官。その顔の動きに一度目が持っていかれる、紙の上の鉛筆は動かないで待っている。被告人がうつむきそう、目と手は紙に鉛筆で、うつむく人の肩、左肩から描き始めて、右肩、正中線、首の位置にワイシャツの襟首ような線を入れて、腕はどうなってる、目をあげれば被告人うつむいてない。
大阪の人にメールする、大阪はどうですか?今度大阪行きますよ。