見たことのないシャツを着ている、これまでは知り合いじゃなかった人なので、どんなシャツを持っているのかなんて知らないのは当たり前なんだけど、知り合ったので会ったりするので着ているシャツを見ることになって、今日着ているシャツしか知らない他にはどんなシャツを持っているんだろう。

 

「今度一緒に服買いに行こうよ」と言えば、待ち合わせするかもしれない駅の近くのプロントで30分遅れるというのであればどこか喫茶店でも入っていたほうが良いかなと思うほど日差しが強くて上着必要なかったなと思いながら一度は背もたれにかけたナイロンの「これって本当にカーディガンっていうの?」いや、でも書いてあったんだよ買った時のタグにはナイロンの「カーディガンっていうと毛糸のイメージが強すぎるな、これはなんか別の名前ありそうだけど」と言われてからは確かにそうだ、カーディガンとも呼べずに「ナイロンの」と呼んでいるそれは、ナイロン素材なので軽くてコンパクトになるし、窓際の席に腰掛けて見ている外はこれからまだ暑くなりそうな気配に、ナイロンの、を軽く畳んで足元に置いたリュックサックにしまって、顔を上げる時、唇の裏側を噛む癖が出ていたので少しひょっとこみたいな口の形をしていて、「それやめたほうがいいね」と指摘され続けていたことを思い出してやめた唇は、手が掴んで近づけてくるアイスコーヒーにささったストローの先端を迎えようとして少し突き出すかもしれない。

 

夕方になってこの家には姿見がないことに気がついて、上野にあるリサイクル家電の店を覗いてみたが、中古とは言っても当初ぼんやりと考えていた予算の四、五千円で買えるもので趣味の合うものはなく、変に波打った形のものだったり、フレームが大理石風のプリントが施された化粧板で作られていてかえって安っぽくみえるようなものしか無かった。久しぶりに見た鏡に映った全身の自分は、背を向けて、結局どれも買わずに店を出ていった。王将で餃子を食べてから帰ることにした。