へーちゃんから送られてきた手紙で驚いたのは、まったく予想外の字の綺麗さで「お久しぶりです。突然の手紙ですいません。」と、書きはじめたのは数日前なんだろうということを手紙を受け取るまでは考えたこともなかったのに、受け取った手紙を読んでいると書き始めたのは数日前なんだろうと、大分県から送られてきた手紙はその後を読み進めようとすると、どうしても目で追うことになる字が綺麗なんだね、これが、ブルーのインクで。便箋の両端が均等に余白がある。こんなに端正な字を書くとは知らなかったから、とても驚いた、知っていたへーちゃんはこんな字を書く人だったっていうことに塗り変わったからこれまでのへーちゃんが喋っていた言葉も、まさかあんな綺麗な字で喋ってたのか。
「こちらでは、銭湯に行くと金が減って体が綺麗になるので、今日も銭湯に行こうと思った道の途中で、言い忘れるところでしたがこちらは夜で、銭湯は24時に閉店、23時30分が最終入場だから急いで自転車で向かっているときに、道に黒いシルエットが横切ってそれは猫、近づいてくる自転車に驚いたのか縦格子の門扉の隙間に逃げ込んだ、その行方を目で追いかけると、光った、まるい二つの、あれは猫の目が門扉の向こうの暗がりからこちらに向けて、猫の目が光ったのを見たということは、素早く周囲を見渡して近くに街灯はないことを確認して、猫と目が合ったということは、夜の月明かりというか太陽の光ということです。太陽で生まれた光は月に反射して、猫の目に反射して、キラリと光ったのを見た、目は、猫の目を反射して、月を反射して、太陽に向かっていきました。
風呂上がりにベンチに座ってググると、太陽からの発せられた光は約8分後に地球上に到達するらしく、太陽→月→猫の目→私の目に気づかれたのはだいたい9分くらい前の太陽なんです、と書かれた、発せられた、この文章が目に到達するのは何分後になるのか、何日後、何十年後とかには、買って来てもらったのをすっかり忘れてたアイスが溶けちゃった分、過ぎていったことが見てわかるアイスが溶けるぐらい暑かった昼間に出ていた太陽は、今は夜なのでだいぶ涼しくなる。